タイの不法就労摘発強化!日系企業が今すぐ取るべき「危機管理」対策
タイのピパット・ラチャキットプラカーン労働大臣は先日、「違法な雇用を当たり前にしてはならない」という強硬な方針を打ち出し、外国人労働者の不法就労およびタイ国民の職を奪う行為に対する「厳格な対策」を明確に発表しました。
労働省には市民からの懸念が多数寄せられており、雇用主による法令無視の不適切雇用が後を絶たないとのこと。一部関係者の黙認といった根深い問題も指摘されており、今後、タイ政府がこの問題に本腰を入れて取り組むことは確実です。
特に注目すべきは、2024年10月から2025年6月までのわずか8ヶ月間で、外国人労働者約3万1千人が調査され、そのうち約1,100人以上が法的措置の対象となっているという現状です。これは、タイ国内での摘発がすでに厳しく行われていることを如実に示しています。
日本企業の皆様は、この労働省の新しい方針と、すでに進んでいる摘発強化の動きを、自社の「危機管理」における最重要課題の一つと認識すべきです。
なぜ今、日系企業が「不法就労対策」を強化すべきなのか?
タイ労働省の発表から読み取れるのは、単なる取り締まり強化に留まらない、社会全体を巻き込んだ「違法雇用撲滅」への強い意志です。
◯政府の強い意思表示: 大臣自らが「目に見える形で解決しなければならない」と発言していることからも、今後の取り締まりがより一層強化されることは確実です。
◯市民からの情報提供促進: 市民への情報提供の呼びかけは、通報による摘発が増加する可能性を示唆しています。企業は常に監視されているという意識を持つべきです。
◯刑事罰・罰金のリスク増大: 不法就労の発覚は、外国人労働者本人だけでなく、雇用主である企業にも重い罰則(高額な罰金、事業停止命令、責任者の逮捕など)が科せられるリスクを高めます。
◯レピュテーションリスクの深刻化: 法令違反による摘発は、企業の社会的信用を大きく損ないます。SNSなどで情報が拡散されれば、ブランドイメージの毀損は計り知れません。
◯操業停止のリスク: 罰則や行政処分により、事業の一部または全体の操業停止を命じられる可能性があり、ビジネスに壊滅的な影響を与えます。
特に注意すべき「外国人就労禁止職種」
労働省が特に問題視しているのが、「外国人が勤務することが一切禁止されている職業(全面禁止職種)」への不法就労です。以下にその一部を抜粋します。
- 1. 木材彫刻
- 5. 散髪師、理容師または美容師
- 仲介業または代理店業(国際業務を除く)
- タイ式マッサージ
- 観光ガイドおよび観光業
- 行商および露店業
- 秘書
- 法律または訴訟に関する業務(仲裁人業務およびタイ法以外に関連する紛争に関する仲裁支援または仲裁代理を除く)
一見、日系企業とは無関係に見える職種もありますが、「事務職」「仲介業」「秘書」などは、日本人が安易に外国人(第三国籍者など)を雇用してしまいがちな落とし穴となり得ます。自社の業務内容がこれらの禁止職種に該当しないか、今一度厳しく確認する必要があります。
日系企業が今すぐ講じるべき「危機管理」対応策
今回の労働省の方針を受けて、日系企業は以下の対策を早急に講じる必要があります。
◯社内総点検とリスクアセスメントの実施:
現在雇用している全ての外国人労働者のビザ、ワークパーミット(労働許可証)の有効期限と種類、および従事している業務内容を徹底的に確認します。
特に、労働許可証に記載された職種と実際の業務内容が一致しているかを入念にチェックしてください。
上記「禁止職種リスト」に該当する業務を外国人が行っていないか厳しく確認します。
◯雇用契約と就業規則の見直し・徹底:
外国人労働者との雇用契約がタイの労働法に準拠しているか再確認します。
外国人労働者を含む全ての従業員に対し、法令遵守の重要性、特に不法就労に関する罰則について、タイ語で明確に周知徹底します。
社内での通報窓口の設置や、従業員が疑問を解消できる仕組みを強化します。
◯人事担当者の教育強化:
人事・労務担当者は、タイの最新の労働法規、特に外国人雇用に関する規制を正確に理解しておく必要があります。
定期的な研修や情報収集を通じて、常に知識をアップデートさせましょう。
◯外部専門家との連携強化:
タイの労働法に詳しい弁護士事務所、または外国人雇用に特化したコンサルタントと顧問契約を結び、定期的なリーガルチェックを受ける体制を構築します。
特に、新規採用やビザ・ワークパーミット更新時には、専門家の助言を必ず仰ぐようにしてください。
◯コンプライアンス意識の醸成:
経営層から現場の管理職に至るまで、「違法な雇用は絶対に行わない」という強いコンプライアンス意識を徹底します。
目先の利便性やコスト削減に惑わされず、法令遵守を最優先する企業文化を根付かせましょう。
まとめ
タイ労働省の発表は、外国人労働者の雇用に関する規制が、これまで以上に厳格化されることを明確に示しています。これは、日系企業にとって「知らなかった」では済まされない、重大な「危機」となり得ます。
アジア危機管理リーガルエージェンシーは、タイにおける外国人雇用、労務問題、そして企業コンプライアンスに関する深い知見と実績を有しています。不法就労に関するリスクを未然に防ぎ、あるいは万が一問題が発生した場合でも、法的な観点から最適な解決策を提案し、貴社の事業を強力にサポートいたします。
【お問い合わせ】
アジア危機管理リーガルエージェンシーhttps://arms-agency.com/contact/

投稿者プロフィール

最新の投稿
企業調査2025年6月20日【海外進出企業の危機管理】信頼できる専門家選びの重要性
企業調査2025年6月19日【競争力低下の現実】IMD世界競争力ランキング30位転落!タイ日系企業が「今」見直すべき危機管理戦略
社員不正調査2025年6月18日タイの不法就労摘発強化!日系企業が今すぐ取るべき「危機管理」対策
社員不正調査2025年6月17日日本人駐在員がタイ人従業員に暴力!日系企業が負う「責任」と対策