袖振り合うも多生の縁

広島県の呉市に辿り着いた

広島自体来たこと記憶がない

はだしのゲンは小さい頃、よく読んだ

戦争は絶対してはいけないとトラウマになりました

元来、インドア派な私だが、この探偵という仕事の為、さまざまな所へ行く

よく「色んな所へ行って、その土地の観光地行ったりできていいですね〜」とのんきな事言われるが

あまりそんな気分にはなれない

今回のミッションは「相続人探し」

依頼人の親族が亡くなり、相続が発生するのだが、その相続人が20年前にフィリピンへ移住したまま、どこで何をしているのか分からず、私に探して欲しいと依頼があった

フィリピンの調査ルートを使い、相続人に探しているとなんと3ヶ月前に日本に戻ってきているのが判明した

それが今回の呉なのだ

相続人の最近の様子を調査して、問題がなければ接触したいとの事

逆にフィリピンじゃなくてよかった

マニラで張り込みとかとんでもないです

呉に前日入りして対象者の住所へ下見へ行く

あまりにも住宅密集地でアマルフィのような地形

呉市は瀬戸内海に面しており、山がちな地形のため、斜面地に住宅が密集している地域が多く見られるらしい

しかも、対象者の住居の出入り口を直視できるところがない

これでは本人の確認すらままならない

明日、ちゃんと本人と接触できるのかな?

そんな事を深く考えもしようがない

とりあえずどこか飲みにいくか!

と呉駅に近い居酒屋にはいる

ハイボールを注文して飲んでいると

隣の席に60〜70歳代の男性が3名座る

話を聞いていると40年ぶりに会うそうだ

何やら同じ会社の同僚だったようで

仲良く当時の事を話している

年輩の方特有の声がデカさなので

隣で聞きながら相槌うって笑っているうちに

彼らの話に参加することになった

そのうち私の職業が探偵だという事がわかると彼らの興味が私に移る

色々と話が盛り上がり、もう一軒行こうという事になり

昭和感満載のカラオケスナックに連れていかれる

そこでも隣の席の経営者グループと仲良くなりカラオケ大会がはじまる

袖振り合うも多生の縁

楽しくやろう!と、カラオケは大の得意なのだ

一度、歌を聞くとだいたい歌える

なので生まれた時から有線放送が流れる商店街でそだった私はだいたい歌えるからオールスタンディングでタンバリンが叩けて歌えるのだ

そしてスナック代を奢ってもらい

連絡先も交換せず感謝を告げて別れた

袖振り合うも多少の円

そして翌日、朝から対象宅から調査を行うと

住宅密集地だけあって地域の住民がかなり私の車を警戒している

昼過ぎる頃には車の運転席を覗き込む住民もチラホラ

しかし長年探偵業やっていると

そんなものには動じない笑

なんでも引け目を感じ取られたら相手のペースに持っていかれる

逆に何かの使命感を持って行動してる雰囲気が大事だ

こちらを怪しげに睨まれ、目が合った時に

小さく「おつかれさまです!」と話かけたりすると

相手も「おつかれさまです」と返してくれたりする

そんな地域住民との攻防戦をひろげていると

対象者が自宅から歩いて出てきた

彼を尾行すると駅の方へ向かっているようだ

このまま電車でどこか行くのかな?

駅の近くまで来ると、対象者は自転車置き場に入っていき、停められていた自転車に乗り、走り出る

マズい、非常にマズい、私の尾行用の自転車は対象者の自宅の近くに置いてあるのだ

もう覚悟決めて走って追うしかない

と、300mほど走るがどんどん距離がひらいていく

あー切ないな、このまま見失うのか

と、少し諦めたとき

「お兄さん、どうした?」と自転車に乗ったおじさんが声を掛けてきた

思いっきり走っていたので気になって声をかけたのだろうか?

しかし、よく見ると昨日、居酒屋で一緒に飲んだおっさんだった笑

「すいません、自転車貸してください、尾行してるんです」

袖振り合うも多生の縁

はじめからこの為に知り合う縁だったんですね

投稿者プロフィール

TITAN
TITAN
探偵歴20年 日本とタイで活動中 再現性の低い独自のトラブル解決方法が得意 アジア危機管理リサーチ所属 https://aa-tsc.com/asia/