ラオスにおける児童買春:日本人が巻き込まれないための対策と万が一の対応

在ラオス日本国大使館より、ラオスにおける日本人による児童買春に関する注意喚起が発信されました。SNS上での示唆的な投稿が見受けられる現状は、ラオスへの渡航や事業進出を検討している日本人にとって、決して看過できない問題です。
ラオスでの児童買春は、現地の法律だけでなく、日本の「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ禁止法)によっても処罰の対象となります。今回は、日本人がこのような事態に巻き込まれないための対策、万が一巻き込まれたり逮捕された場合の対応、そして日本人社員が逮捕された際の日本企業の取るべき対策について解説します。

日本人が児童買春に巻き込まれないための対策

最も重要なのは、「関わらない」ことです。以下の点を徹底し、未然にリスクを防ぎましょう。

◯ラオスおよび日本の法令順守の徹底:

ラオスでは、児童との関係に限らず、「売春・買春行為」自体が国内法により処罰の対象となります。

日本の児童買春・児童ポルノ禁止法では、児童を18歳未満と定義しています。たとえ相手が18歳未満だと知らなかったとしても、周旋・勧誘、児童ポルノの公然陳列などについては処罰を免れません。

同法は親告罪ではないため、被害者からの訴えがなくても処罰されます。

◯SNS等での情報に惑わされない:

「安全な場所」「摘発されない」といったSNS上の誤った情報や誘いには決して乗らないでください。日本警察は国外犯の取り締まりに積極的で、外国の捜査機関と緊密に連携しています。

◯「相手の年齢確認」の徹底と疑わしきは避ける:

外見だけで年齢を判断せず、常に相手が18歳未満でないか確認する意識を持つことが不可欠です。しかし、そもそもこのような関係になること自体が違法行為であり、危険を伴います。

少しでも「若い」と感じたり、年齢が疑わしいと感じる相手とは、いかなる金銭的な関係や性的な関係も持たないでください。

◯現地の文化や風習への理解:

ラオス社会の規範を尊重し、日本の常識が通用しない場面があることを認識してください。安易な気持ちや好奇心から行動を起こさないことが大切です。

◯不用意に歓楽街や危険な場所へ近づかない:

トラブルに巻き込まれるリスクが高い場所への不用意な立ち入りは避けましょう。
万が一、巻き込まれたり逮捕された時の対応
最悪の事態に直面してしまった場合でも、冷静かつ適切に行動することが重要です。

◯供述・署名の拒否:

捜査当局からの尋問に対し、その場で安易に供述したり、内容を理解できない書類に署名してはいけません。

自身の権利を主張し、弁護士を呼ぶことを要求してください。

◯弁護士の要請:

ラオスでは逮捕された場合、弁護士を呼ぶ権利があります。速やかに弁護士を要請し、弁護士が来るまでは一切の尋問に応じないのが原則です。

在ラオス日本国大使館が弁護士リストを提供してくれる場合があります。

◯在ラオス日本国大使館への連絡:

自身や知人が逮捕された場合、または巻き込まれた可能性がある場合は、速やかに在ラオス日本国大使館に連絡してください。大使館は、ラオスの国内法と日本の在外公館としての職務の範囲内で、必要な支援(弁護士の紹介、家族への連絡、医療機関の案内など)を行います。ただし、法的な代理人となることはできません。

◯家族や会社への連絡:

可能であれば、日本の家族や勤務先に連絡を取り、状況を伝えてください。

◯不当な要求に応じない:

捜査当局者やブローカーから、法外な金銭を要求されたり、不当な取り扱いを受けた場合は、安易に応じず、大使館や弁護士に相談してください。

日本人社員が巻き込まれ逮捕された場合の日本企業の対策・対応

社員が逮捕されるという事態は、企業にとって事業継続性、信用、ブランドイメージに大きな影響を与えます。迅速かつ適切な対応が求められます。


1.事前の危機管理体制の構築

◯危機管理マニュアルの策定:

海外で社員が逮捕された場合の連絡フロー、対応部署、担当者、弁護士選定の基準などを定めたマニュアルを整備しておくべきです。

◯法令順守研修の実施:

ラオスを含む渡航先の法令(特に労働法、刑法、風俗に関する法規)について、社員への定期的な研修を実施してください。特に、児童買春・児童ポルノ禁止法の国外犯規定は強く周知徹底すべきです。

◯渡航前の情報提供と注意喚起:

ラオスへ出張・赴任する社員に対し、渡航前に大使館からの注意喚起内容を含むリスク情報を必ず提供し、再度注意喚起を行ってください。

◯現地緊急連絡体制の確立:

現地の提携弁護士事務所、コンサルタント、日本大使館の連絡先をリストアップし、緊急時にすぐに連絡が取れる体制を整えておくべきです。


2.事件発生時の対応

◯事実関係の早期把握:

在ラオス日本国大使館、現地の弁護士を通じて、速やかに逮捕事実、容疑、状況などの事実関係を把握するよう努めてください。

◯社員の安否確認と支援:

まずは社員の身体的・精神的な安否を確認し、必要に応じて弁護士の派遣、家族への連絡支援、医療支援などを検討します。

◯専門家との連携:

ラオスの現地法に詳しい弁護士、危機管理コンサルタント、そして必要であれば日本の弁護士と連携し、法的な助言を得ながら対応を進めてください。

アジア危機管理リーガルエージェンシーのような専門機関は、労務トラブル解決支援や不正調査のノウハウを活かし、客観的な事実に基づいた公正な判断や、その後の法的対応に向けたサポートを提供できます。

◯広報・情報開示の検討:

事件の性質、影響の範囲、社会からの注目度に応じて、適切な広報戦略を検討します。安易な情報開示は避けつつも、必要であれば企業の信頼性維持のため、誠実な姿勢を示す必要があります。

ただし、捜査中の事案については、捜査を妨害しないよう慎重な対応が求められます。

◯社内調査と再発防止策:

事件の背景や原因を社内で調査し、同様の事件が二度と発生しないよう、社内規定の見直し、研修内容の強化、赴任者へのサポート体制の改善など、再発防止策を策定し、実行してください。

◯関係省庁への報告:

事件の重大性によっては、日本の関係省庁への報告が必要になる場合があります。

すべての日本人が尊重される海外活動のために

ラオスにおける児童買春の問題は、個人の人権侵害であるだけでなく、国際社会における日本の評価にも関わる重大な問題です。日本企業がラオスで健全な事業活動を行うためには、法的な順守はもちろんのこと、倫理的な責任を果たすことが不可欠です。
海外での活動においては、常に現地の法令、文化、そして人権に対する深い理解と尊重が求められます。特に、社会的弱者である児童に対する買春行為は、決して許されるものではありません。すべての日本人が、国際社会の一員として責任ある行動を取り、尊重される海外活動を推進していくことが重要です。

投稿者プロフィール

arms-agency
arms-agency