タイで日本の上司が絶対にやってはいけないこと

近年、多くの日本企業がタイに進出し、現地で事業を展開しています。タイ人の従業員と共に働く日本人の上司も増えていますが、異文化の中で円滑なコミュニケーションを図り、良好な信頼関係を築くためには、日本国内での常識が通用しない場面があることを理解しておく必要があります。
本稿では、「タイで日本の上司がタイ人の部下に絶対にやってはいけないこと」を具体的な事例を交えながら解説し、もし問題が起こってしまった場合の対策について考察します。


事例1:感情的な叱責と公共の場で批判
やってはいけないこと: 部下のミスに対して、感情的に大声で叱責したり、他の従業員の前で批判したりすること。
問題点: タイ人は一般的に、หน้า(メンツ)を非常に大切にします。 公共な場所での批判や叱責は、部下のหน้าを潰し、強い屈辱感や恨みを抱かせる原因となります。また、感情的な態度は、冷静なコミュニケーションを妨げ、問題解決をより困難にします。


事例: 日本人課長の田中さんは、タイ人スタッフのミスに対し、オフィス全体に響き渡るような大声で叱責しました。「なんでこんな簡単なこともできないんだ!」という言葉は、周りのタイ人スタッフも委縮させ、職場の雰囲気を悪くしました。叱責されたタイ人スタッフは、その後、田中さんとのコミュニケーションを避け、仕事へのモチベーションも低下してしまいました。
対策:

  • ミスを指摘する場合は、個々な場所で冷静に行う。
  • 人格否定や感情的な言葉遣いは避け、具体的な事実に基づいて指導する。
  • 人目のある場所での批判ではなく、個人的 なフィードバックを心がける。
  • 相手のメンツを尊重する姿勢を示す。
    事例2:能力や努力を否定する言葉

  • やってはいけないこと: 部下の能力や努力を否定するような言葉を使うこと。「君には無理だ」「全然頑張っていない」といった発言は、部下の自信を喪失させ、成長の機会を奪います。
    問題点: タイ人は、努力や成果を認められることを強く望みます。能力不足を指摘する際も、頭ごなしに否定するのではなく、改善のための具体的なアドバイスやサポートを示すことが重要です。

  • 事例: 日本人部長の山田さんは、タイ人チームリーダーの提案に対し、「そんなアイデアは現実的じゃない」「もっと実現性のある提案をしてくれ」と一方的に否定しました。チームリーダーは、自分の意見が全く聞き入れられなかったことに落胆し、その後、積極的に意見を出すことをためらうようになりました。

  • 対策:
  • 提案や意見に対して、一気に否定するのではなく、まずは傾聴する姿勢を示す。
  • 否定的なフィードバックをする場合でも、具体的な改善点や二者択一な方法を示す。
  • 部下の良い点や努力を認め、積極的に褒める。
  • 成長を促すための建設的なフィードバックを心がける。

  • 事例3:メンツ文化や習慣の無視、 自尊心を傷つける言動
    やってはいけないこと: タイの文化や習慣を理解しようとせず、日本のやり方を一方的に押し付けたり、タイの 文化を傷つけるような発言をしたりすること。

  • 問題点: タイには独自の文化や歴史、国民性があります。それらを尊重しない態度は、タイ人従業員の反感を買い、信頼関係を損なう大きな原因となります。

  • 事例: 日本人社長の佐藤さんは、タイの祝日であるソンクラーン(水かけ祭り)について、「ただの水かけで何が楽しいんだ?その分仕事しろ」と発言しました。この発言は、タイ人従業員の間に広まり、「タイの文化を尊重していない」として強い反発を招きました。

  • 対策:
  • タイの文化、習慣、宗教、歴史などを積極的に学ぶ姿勢を持つ。
  • タイの祝日や伝統を尊重し、国民性を傷つけるような言動は慎む。
  • 日本のやり方を押し付けるのではなく、タイの状況に合わせて柔軟に対応する。
  • 文化的な違いから生じる誤解を避けるため、丁寧に説明する。
    事例4:個人的な価値観や家族観への軽視
    やってはいけないこと: 部下の個人的な 価値観や家族観に対して軽視をしたり、自分の 価値観を押し付けたりすること。

  • 問題点: 個人の価値観や家族観は、深く根ざしたものであり、他人が安易に批判すべきものではありません。特に、家族を大切にするタイ人の価値観を否定するような言動は、強い反感を買う可能性があります。

  • 事例: 日本人マネージャーの井上さんは、タイ人女性スタッフが子供の学校行事のために休暇を取得することに対し、「そんなことで休むなんて考えられない」「仕事が一番大事だろう」と批判しました。この女性スタッフは、家族を大切にする自分の価値観を否定されたと感じ、井上さんに対して不信感を抱くようになりました。
    対策:
  • 個人の価値観や家族観は尊重し、批判的な意見は避ける。
  • ライフワークバランスに対する考え方の違いを理解する。
  • 休暇取得の理由を詮索したり、不満を示したりしない。
  • プライベートで個人的な事情に配慮する姿勢を示す。

  • 問題が起こってしまった時の対策
    もし、上記のような言動によってタイ人部下との間に問題が生じてしまった場合は、以下の対策を講じることが重要です。
  • 真摯な謝罪: 自分の言動を振り返り、相手に不快な思いをさせたことを認識し、誠意をもって謝罪する。言葉だけでなく、態度で誠意を示すことが大切です。
  • 相手の意見を傾聴: 部下の気持ちや意見を真摯に聞き、共感する姿勢を示す。相手の立場になって考えることが重要です。
  • 再発防止策の提示: 今後、同様の問題を起こさないために、どのような点に注意し、どのように行動を改めるかを具体的に示す。
  • 関係修復への努力:問題解決後も積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係の再構築に努める。
  • 法律専門家やコンサルタントへの相談: 問題が深刻化している場合は、法律専門家や異文化コミュニケーションのコンサルタントに相談し、適切なアドバイスを受ける。

  • まとめ:相互理解と尊重が信頼関係の基盤つくり
    タイで日本人の上司がタイ人の部下と良好な関係を築くためには、 習慣や文化的な違いを理解し、互いを尊重する姿勢が不可欠です。日本国内の常識にとらわれず、タイの文化や国民性を理解し、適切なコミュニケーションを心がけることが海外ビジネスの成功の秘訣と言えるでしょう。

  • アジア危機管理リーガルサービスでは、タイにおける労務問題や異文化コミュニケーションに関するコンサルタントを提供しております。タイでのビジネス展開における法的リスクの低減や、従業員との良好な関係構築をサポートいたします。お気軽にご相談ください。
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