5月に増える休業調査依頼の背景:対立構造を生まない職場環境づくり

5月に入り、新年度の疲れや環境の変化から、従業員の休職に関するご相談が増えることがあります。特に、仕事のストレスによる精神疾患や適応障害で休業補償を受けている社員について、「本当に障害があって休んでいるのか確認したい」というご要望は少なくありません。


このようなご相談の背景には、往々にして会社と社員の間に根深い対立が存在します。例えば、以前から会社と社員の折り合いが悪く、何らかのトラブルが発生していたり、社員が会社に対して強い不満や恨みを抱いているといったケースです。


休業の真偽を確認することも重要ですが、根本的な解決のためには、会社と社員が対立するような関係性を生まない職場環境づくりが不可欠です。本稿では、企業が取り組むべき対策について考察します。


休業の真偽確認の前に考えるべきこと
休業している社員の状況が本当に業務に起因するものなのか、あるいは単なる怠慢なのか。企業として事実を確認したいという気持ちは当然です。しかし、その調査が社員との対立をさらに深める可能性があることも認識しておく必要があります。
調査を行う前に、以下の点を自問自答してみましょう。

  • 社員が休職に至るまでに、会社として適切なサポートや配慮ができていたか?
  • 職場内に、社員が安心して相談できるようなコミュニケーション体制があったか?
  • 社員の訴えに対して、真摯に向き合ってきたか?
  • 過去に、社員との間で不信感を生むような出来事がなかったか?
    これらの問いに対する答えによっては、休業の真偽調査よりも先に、会社としての姿勢や職場環境を見直す必要があるかもしれません。

  • 対立構造を生まない職場環境づくりのための対策
    会社と社員が対立的な関係にならないためには、日頃からの職場環境づくりが非常に重要です。以下に、企業が取り組むべき具体的な対策を挙げます。
  • 風通しの良いコミュニケーションの促進:
  • 上司と部下の定期的な面談を実施し、業務の進捗だけでなく、悩みや不安なども共有できる機会を設ける。
  • 部署内外のコミュニケーションを活性化させるためのイベントや交流会などを企画する。
  • 匿名での意見や相談が可能な目安箱や社内SNSなどを導入する。
  • ハラスメントの防止と早期発見:
  • パワハラ、セクハラをはじめとする各種ハラスメントに関する明確な禁止規定を設け、全従業員に周知徹底する。
  • ハラスメントに関する研修を定期的に実施し、従業員の意識向上を図る。
  • ハラスメントの相談窓口を設置し、被害者が安心して相談できる体制を整える。早期発見と適切な対応が、深刻な対立を防ぎます。
  • 公平で透明性の高い評価制度:
  • 従業員の貢献度や努力を適切に評価する制度を設け、評価基準を明確にする。
  • 評価結果について、上司から部下へ丁寧なフィードバックを行い、納得感を得られるようにする。
  • 不当な評価や差別的な扱いがないように、評価プロセスを定期的に見直す。
  • ワークライフバランスの推進:
  • 長時間労働の是正に取り組み、有給休暇の取得を奨励する。
  • 柔軟な働き方(フレックスタイム制、テレワークなど)の導入を検討し、従業員の多様なニーズに対応する。
  • 心身の健康維持のためのサポート体制(健康診断、相談窓口など)を整備する。
  • 問題発生時の誠実な対応:
  • 社員から何らかの訴えがあった場合、真摯に耳を傾け、事実関係を丁寧に調査する。
  • 調査結果に基づき、公平かつ適切な対応を行い、社員に納得してもらえるように説明する。
  • 会社の非を認めるべき点があれば、誠実に謝罪し、再発防止策を講じる。

  • それでも対立が生じてしまった場合の対応
    上記の対策を講じても、会社と社員の間で対立が生じてしまう可能性はあります。そのような場合には、感情的な対立を避け、客観的な事実に基づいて冷静に対応することが重要です。
  • 第三者機関の活用: 弁護士や労働問題の専門家など、中立的な第三者に相談し、客観的なアドバイスを得る。
  • 調停やあっせんの検討: 裁判に至る前に、調停やあっせんといった紛争解決手段を検討する。
  • 記録の徹底: 問題発生の経緯や対応について、詳細な記録を残しておく。

  • アジア危機管理リーガルサービスができること
    弊社、アジア危機管理リーガルサービスでは、企業における労務問題、特に休職者の状況調査や、会社と社員間の対立解消に向けたアドバイス、職場環境改善のご提案を行っております。
    休職者の状況調査においては、プライバシーに配慮しつつ、客観的な事実に基づいた調査を実施いたします。また、対立的な関係にならないための職場環境づくりについても、現状分析から具体的な対策立案、実行支援まで、トータルでサポートいたします。
    もし、従業員の休職問題や労務トラブルでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
    【お問い合わせ】
    アジア危機管理リーガルサービス
    https://arms-agency.com/contact/
    いかがでしたでしょうか?このブログ記事が、企業が休職問題に向き合う上で、そしてより良い職場環境を築くための一助となれば幸いです。

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