タイ進出企業の不正対策事例

タイに進出した日系企業が直面した不正事例と、その解決プロセスをご紹介します。

専門家による徹底調査と包括的な対応が、どのように企業価値を守るのか

解決事例①:製造業A社における横領事件

タイに進出している日系製造業A社は、近年の業績拡大に伴い、管理部門の強化を図っていました。しかし、ある日、経理担当者からの内部告発により、長年にわたり一部の従業員による組織的な横領が行われている疑いが浮上しました。

社内調査を進める中で、複雑な取引の流れや隠蔽工作が明らかになり、A社は自力での全容解明と適切な対応が困難であると判断。
そこで、不正調査の専門会社に依頼することとなりました。

A社の経理資料、取引記録、関係者へのヒアリングなどを詳細に分析しました。その結果、複数の従業員が共謀し、架空の仕入取引を計上したり、実際よりも高額な請求書を作成させ、差額を着服したりする手口が明らかになりました。不正の期間は数年に及び、被害総額は数千万円に上る可能性が示唆されました。

その後、調査チームは、デジタルフォレンジック技術を活用し、隠蔽された電子データの復元や、関係者のPCやスマートフォンの解析も行いました。これにより、不正に関与した従業員間の連絡記録や、不正な資金の流れを示す証拠が発見されました。

調査結果に基づき、A社に対して法的観点からのアドバイスを提供しました。具体的には、証拠の保全方法、不正行為者に対する法的責任の追及、刑事告訴の手続き、損害賠償請求の可能性などについて詳細な説明を行い、タイの刑法や労働法に基づき、A社が取るべき具体的な法的措置を提案しました。また、不正行為者との交渉や、訴訟手続きの準備も支援しました。

不正行為者の特定と処分

徹底的な調査と法的サポートにより、不正に関与した複数の従業員が特定されました。A社は、両社の協力のもと、証拠に基づき不正行為者に対して懲戒解雇処分を下しました。

刑事告訴と損害賠償請求

証拠を揃えた上で、不正行為者に対して刑事告訴を行いました。
また、民事訴訟を通じて、不正によって被った損害の賠償を請求する手続きも開始しました。

再発防止策の策定と実施

事件の解決後、A社は二度とこのような不正が発生しないよう、リスク管理のサポートの顧問契約を結び、内部統制システムの抜本的な見直しを行いました。

  • 職務分掌の徹底と相互牽制機能の強化
  • 承認プロセスの厳格化と証拠書類の精査
  • 定期的な内部監査の実施と監査体制の強化
  • コンプライアンス研修の実施と従業員の意識向上
  • 内部通報制度の整備と運用
  • ITシステムの導入による取引の透明性向上

この事例は、海外に進出する日本企業にとって、不正リスクは決して他人事ではないことを示唆しています。特に、グローバルな事業展開においては、文化や商習慣の違いから、日本国内とは異なる不正の手口や背景が存在する可能性があります。

不正が発生した場合、自社だけで解決しようとせず、早期に外部の専門家の知見を借りることが、迅速かつ適切な問題解決につながります。また、事件の解決だけでなく、再発防止のための内部統制システムの構築と運用が、持続的な企業成長のために不可欠であることを改めて認識する必要があります。

解決事例②:製造業B社における横領事件

灼熱の太陽が照りつけるバンコク。活気あふれる街の喧騒とは裏腹に、日系製造業A社のオフィスには重苦しい空気が漂っていた。数年来の業績不振、目を覆いたくなるようなコスト増。経営陣の社内で不正が起きているのではないかと感じていた。

「まさか、うちの会社で…」

疑念の矛先は、長年B社を支えてきたベテランの現地マネージャー、プラチャ氏に向けられた。温厚な人柄で知られるプラチャ氏だが、最近の彼の言動には不審な点が多かった。頻繁な外出、曖昧な報告、そしてなぜか増えた羽振りの良さ。しかし、決定的な証拠は何一つ掴めない。内部調査は暗礁に乗り上げ、B社の経営陣は藁にもすがる思いで、弊社に相談にみえた。

最初に調査を行い、プラチャ氏の日常を追跡。彼の行動パターン、接触する人物、そして隠された金の流れを丹念に洗い出した。現地の情報ネットワークを駆使し、表向きの顔とは異なるプラチャ氏の裏の顔が明らかになっていく。それは、複数の取引先からの不正なリベート、架空請求による会社資金の横領、そして親族が経営する会社への不当な利益供与という、目を覆うばかりの不正の数々だった。

同時に、B社が抱える法的な問題を整理し、掴んだ証拠を基に、タイの法律に照らし合わせ、B社が取るべき法的措置を綿密に検討。プラチャ氏の不正行為は、刑法、商法、そして会社法に抵触する可能性が高く、今後の交渉戦略、そして最悪の事態を想定した訴訟準備のサポートを行った。

調査が進むにつれ、B社の関係者へのプレッシャーも増していくことが予想され為、重要な証言者となりうる社員の身辺警護、不正に関する重要な書類やデータの保全。万が一の脅迫や報復行為からB社とその関係者を守る、堅牢な盾としての役割を担いB社の社員たちに安心感を与えました。

そして、不正の根源を断ち、二度とこのような事態を繰り返さないために、プラチャ氏による不正の手口を分析し、脆弱となっていたセキュリティ体制を徹底的に見直した。監視カメラの増設、従業員のアクセス権限の厳格化、情報漏洩を防ぐためのシステム強化。さらに、従業員一人ひとりの意識改革を促すセキュリティ研修を実施することで、組織全体の防衛力を高めていった。

法的サポートを元にB社はプラチャ氏との直接交渉に臨んだ。提示されたのは、動かぬ証拠とタイの法律、そしてB社の断固たる姿勢で当初は否認を続けていたプラチャ氏も、積み上げられた証拠と弁護士の冷静な説得の前に、ついに不正行為を認め、損害賠償を含む和解に応じた。

事件は解決を迎えが、その後は関係者の安全確保と再発防止策の実施。それぞれの専門分野がB社が再び安心して事業に邁進できるようにサポートさせていただきました。

各専門家の役割と連携

  1. 探偵調査
    • B社様からのご依頼に基づき、対象となる現地マネージャーの行動調査、関係者への聞き込み、不正取引に関する証拠収集を実施しました。
    • 現地の情報ネットワークを駆使し、慎重かつ秘密裏に調査を進め、客観的な証拠を確保しました。
    • 収集した証拠は、法的手続きに耐えうる形で法務サポートの戦略へ引継ぎ。
  2. 法務サポート
    • 弊社が収集した証拠に基づき、法的観点から不正行為の事実関係を分析・整理しました。
    • タイの関連法規を調査し、B社様にとって最適な法的措置を検討・立案しました。
    • 対象となる現地マネージャーとの交渉、および必要に応じた訴訟手続きを支援しました。
  3. ボディーガード会社
    • 調査期間中、B社様の関係者や証拠物の安全確保のため、必要に応じて身辺警護や証拠保全措置を実施しました。
    • 万が一の事態に備え、迅速かつ適切な対応を提供することで、B社様のリスク管理をサポートしました。
  4. 警備セキュリティ
    • 不正行為の手口や経緯を踏まえ、B社様のオフィスや関連施設のセキュリティ体制を再評価し、強化策を提案・実施しました。
    • 監視カメラシステムの増設、アクセス権限の見直し、従業員向けのセキュリティ研修などを実施することで、再発防止に向けた対策を講じました。

解決のプロセスと成果

  • 不正行為の事実解明
    慎重な調査により、当該現地マネージャーによる会社資金の横領、架空請求、取引先からの不正なリベート受領などの具体的な証拠を掴むことができました。
  • 法的措置の実行
    法的サポートにより、A社様は法的根拠に基づいた適切な措置を講じることができ、不正行為者との間で損害賠償を含む和解が成立しました。
  • リスクの低減と再発防止
    ボディーガードと警護セキュリティ強化策により、B社様は従業員の安全確保と不正行為の再発防止に向けた強固な体制を構築することができました。
    また今後、潜んだ不正やリスクの発見を効率よく発見する為に内部通報窓口を設置しました。
  • 企業価値の回復
    一連の迅速かつ適切な対応により、A社様の社内秩序は回復し、対外的な信用も損なわれることなく、事業の継続と成長に向けた新たな一歩を踏み出すことができました。

本事例は、海外に進出する日系企業が直面する不正・リスクに対して、単独の対応では限界があることを示唆しています。各分野の専門家が連携し、それぞれの知見とノウハウを活かすことで、より効果的かつ迅速な問題解決が可能となります。
今後もタイに進出する日系企業の皆様が安心して事業展開できるよう、緊密な連携を通じて、不正・リスク対策を包括的にサポートしてまいります。