不正発覚後の初動対応の全て:タイでの効果的な企業不正調査の進め方 

タイに進出する日本企業にとって、残念ながら企業内で不正(横領、背任、キックバックなど)が発生するリスクは常に存在します。しかし、不正の兆候を発見した際の「初動対応」が、その後の解決の成否、企業の損害額、そしてレピュテーションに大きく影響します。特に海外拠点であるタイにおいては、日本とは異なる法制度、文化、商慣習があるため、より慎重かつ専門的な対応が求められます。
本稿では、タイで企業不正の兆候を発見した際の最初のステップから、効果的な調査の進め方、そしてその後の法的対応について解説します。

  1. 不正(横領、背任、キックバックなど)の兆候を発見した際の最初のステップ
    不正の兆候は、従業員からの情報提供、内部監査、会計上の不審点、取引先からの連絡など、様々な形で現れます。これらの兆候を見逃さず、迅速に対応することが重要です。
  • 情報の一元化と秘匿: 不正の兆候に関する情報は、まず信頼できる少数の関係者(経営層、法務担当者など)に集約し、それ以上拡散させないように厳重に秘匿します。情報が漏洩すると、証拠隠滅や関係者による口裏合わせを許すことになります。
  • 現状の把握と評価: どのような不正が疑われるのか、関与している可能性がある人物、具体的な手口の想定、発生時期、被害額の見込みなど、現時点で把握できる範囲の情報を整理します。ただし、この段階では憶測で判断せず、客観的な情報のみを扱います。
  • 調査計画の初期立案: 大まかで構わないので、今後どのように調査を進めるか、誰が調査に当たるのか、どのような専門家の協力が必要かといった初期計画を立てます。この時点で外部の専門家への相談を検討することが重要です。

2.証拠保全の重要性(特に海外拠点での注意点)
不正調査において最も重要かつデリケートなのが「証拠保全」です。適切な証拠がなければ、不正の事実を立証できず、加害者の追及や損害回復が困難になります。

  • デジタルデータの保全: PC、スマートフォン、サーバー、クラウドサービス上のデータ、メール、チャット履歴、会計システム内のデータなど、デジタルデータは不正の痕跡が残りやすい重要な証拠源です。
  • 注意点: 自己判断で操作すると、証拠を破壊したり、改ざんされたと疑われたりするリスクがあります。必ずデジタルフォレンジックの専門家に依頼し、法的な有効性を確保した形でデータを保全する必要があります。タイにおけるデータ保全の法的手続きやプライバシー規制にも注意が必要です。
  • 物理的証拠の保全: 契約書、会計伝票、領収書、発注書、納品書、現金、物品、監視カメラ映像、入退室記録など、全ての関連書類や物品を厳重に保管します。
  • 注意点: 証拠品を勝手に移動させたり、不用意に触ったりすると、証拠能力を失う可能性があります。封印や写真撮影など、適切な方法で管理します。
  • 関係者からの情報収集: 関係者の証言も重要な証拠となり得ます。ただし、ヒアリングは法的な知識と経験を持つ者が慎重に行い、強要や誘導と受け取られないよう注意が必要です。タイ人従業員へのヒアリングでは、文化的な背景や言語の壁を考慮し、通訳の選定や質問の仕方に配慮が必要です。

3.内部調査 vs 外部専門家による調査:それぞれのメリット・デメリット
不正調査を進めるにあたり、内部のリソースで対応するか、外部の専門家に依頼するかの選択は重要です。

  • 内部調査のメリット:
  • 迅速な着手が可能。
  • 社内事情に精通しているため、情報収集がしやすい場合がある。
  • コストを抑えられる可能性がある。
  • 内部調査のデメリット:
  • 調査員の専門知識や経験が不足している可能性がある。
  • 客観性や公平性が疑われる可能性がある(特に経営層や上層部が関与する不正の場合)。
  • 証拠保全やデジタルフォレンジック対応が不十分になるリスクがある。
  • 従業員へのヒアリングが困難になる場合がある(報復を恐れるなど)。
  • 法的な知識不足から、初動対応を誤るリスクがある。
  • 外部専門家による調査のメリット:
  • 高い専門性と客観性: 不正調査の専門知識、経験、デジタルフォレンジック技術を持つプロが、客観的な視点で調査を行う。
  • 証拠能力の確保: 法的に有効な証拠収集・保全が可能。
  • 秘匿性の確保: 外部に依頼することで、情報漏洩のリスクを低減できる。
  • 時間とリソースの節約: 自社で調査を行う手間と時間を省ける。
  • 法的なアドバイスとの連携:弁護士など 法的な専門家と連携し、調査から法的措置まで一貫したサポートが可能。
  • 外部専門家による調査のデメリット:
  • コストが発生する。
  • 外部の専門家が社内事情を把握するまでに時間がかかる場合がある。
    海外拠点であるタイにおいては、言語、文化、法制度の違いから、内部調査だけでは限界があるケースが多いため、早い段階で外部の専門家(危機管理コンサルタント、法務・会計専門家、探偵など)に相談することをお勧めします。

4.警察への通報、懲戒処分、民事・刑事訴訟への連携
不正の事実が明らかになった後、企業は適切な法的措置を検討する必要があります。

  • 警察への通報(刑事告訴): 横領、背任などの犯罪行為が明白である場合、警察への通報や刑事告訴を検討します。これにより、加害者の刑事責任を追及できます。タイの警察への通報では、証拠の提出方法や説明の仕方に法的なアドバイスが必要です。
  • 懲戒処分: 就業規則に基づき、加害者に対して懲戒処分(減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇など)を行います。懲戒処分を行う際は、適切な手続きを踏み、不当解雇とならないよう法的な確認が不可欠です。
  • 民事訴訟: 不正行為によって被った損害を回復するため、加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起します。場合によっては、不正に加担した第三者(共犯者、取引先など)に対しても請求を検討します。
  • 企業内での再発防止策: 不正の根本原因を特定し、内部統制の強化、ルール改正、従業員への教育など、再発防止策を徹底することが最も重要です。
    これらの法的な手続きは、タイと日本の法律が複雑に絡み合う可能性があり、必ずタイの法律に詳しい弁護士と連携しながら進めるべきです。

5.アジア危機管理リーガルエージェンシーの不正調査サポート
アジア危機管理リーガルエージェンシーは、タイにおける企業不正の兆候発見から、徹底した調査、そして解決までの全プロセスをサポートいたします。貴社はインテリジェンスの専門家として、また労働問題の専門家と連携し、以下のようなサービスを提供します。

  • 不正の兆候発見支援と初期対応コンサルティング: 不審な点が見つかった際の初動対応、情報収集、証拠保全に関するアドバイスを提供します。
  • デジタルフォレンジック調査: 不正の疑いがあるPC、スマートフォン、サーバー等からのデジタルデータの保全・解析を行い、法的に有効な証拠を収集します。
  • 不正調査(事実調査): 内部告発や疑義情報に基づき、法的な観点から関係者へのヒアリング、証拠の収集・分析など、徹底した事実調査を実施し、不正の実態を明らかにします。
  • タイ人従業員へのヒアリング支援: 言語・文化の壁を考慮し、タイ人スタッフからの情報収集を円滑に進めるためのサポートを行います。
  • 法的措置に向けた証拠整理・報告書作成: 刑事告訴や民事訴訟に必要な証拠を整理し、法的な観点から有効な調査報告書を作成します。
  • 内部統制強化・再発防止策の提案: 不正の根本原因を究明し、再発防止のための内部統制システムの強化策や組織文化の改善策を提案します。
  • 法的な専門家(弁護士)との連携:刑事告訴、民事訴訟、懲戒処分など、不正に対する法的な対応について、タイ・日本の 法的な専門家(弁護士)と連携し、最適な解決を支援します。
    企業内の不正は、早期発見と適切な対応が極めて重要です。タイでの複雑な状況下においても、貴社の事業と信用を守るため、お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

  • 【お問い合わせ】
    アジア危機管理リーガルエージェンシー
    https://arms-agency.com/contact/

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